INTERVIEW
新築、リノベ、町づくり。
建築を通じて、感動を与える存在でありたい
IROHA CRAFT 株式会社アトリエいろは一級建築士事務所
代表 千葉健司さん
15年間放置されていたかつての町のシンボルをリノベーションし、韮崎市に賑わいを取り戻した「アメリカヤ」。ここを拠点に、インテリア、新築、町づくりへと、縦横無尽に活動を広げる「イロハクラフト」。
代表の千葉健司さんに、リノベーションから始まる建築の可能性についてお話を伺った。
LiVES イロハクラフトといえば「アメリカヤ」の印象が強いせいか、まずリノベーションが浮かんでしまいますが、新築も積極的に手がけられているんですね。
千葉「私は幼い頃、自宅の子供部屋を増築してもらった大工さんに憧れて、中学生のときに建築士になることを目標にしました。想い叶って建築士になることができたのですが、業界で数年働くうち、スクラップ&ビルドの考えに疑問を抱くようになったんです。そこで独立し、〝まだ使える建物〟に付加価値を与えるリノベーションに力を入れてきましたが、十数年が経った現在ではリノベーションで得た経験を、さらに新築にも活かせるようになってきています。住宅では、新築とリノベの割合が半々といったところでしょうか」
LiVES 両方を並行して手がけていることの強みは何でしょう?
千葉「予算に合わせてリノベーションと新築の双方向から提案ができることですね。それと、イロハクラフトは店舗などの商業施設も手がけているので、インテリアに関しても常に高い意識をキープできています」
LiVES 事務所のある「アメリカヤ」が、イロハクラフトを体現するショールームにもなっているんじゃないでしょうか?
千葉「そうかもしれませんね。今まで住宅の受注をいただく際は、複数の設計事務所や事業者とのコンペを通過して、というプロセスがあったのですが、アメリカヤが注目されたことで、それが極端に減りました。私たちの提案したいこと、できることを最初から理解していただいているのかもしれません」
LiVES イロハクラフトに住宅を依頼したい、という方はどんな人たちでしょう?
千葉「主にインテリアやDIYに関心のある20代後半から30代の人たちですね。アメリカヤの2階ではDIYインテリアショップを自社営業していますが、テイストが統一されるので、こちらで使用する素材やパーツを選ばれる方も多いですね」
LiVES 新築・リノベーションに境界線を引かないということですが、具体的にはどのような提案されているのでしょうか?
千葉「予算に合わせた『選べる建築』という提案です。リノベーションではポイントリノベーション、パッケージリノベーション、フルリノベーションの3タイプ。新築の方は、フルオーダーはもちろん、おすすめの規格型住宅スタンダードから、予算に合わせてさらにミニ、スタンダード、プラスの3つのタイプがあります」
Renovation
Standard
Full Order
LiVES 手作り感のあるリノベーションの一方、定額制で規格型の新築住宅があるのは意外でした。
千葉「シンプルで上質な空間であれば、若い人たち、とくにイロハクラフトを選んでくれる人は自分でライフスタイルを描いて住みこなしていける。だから逆に余計なつくり込みはしない方がいい。これもリノベーションの〝建物を活かす〟という経験からたどりついたひとつの答えです。
LiVES イロハクラフトに依頼できる施工エリアは?
千葉「山梨県全域と長野県南部になります。ここ韮崎の事務所から、概ね1時間くらいの距離でしょうか」
〝地元に賑わいを〟という想いをリノベーションで叶えていく
LiVES 例えば東京都内でも、住宅やリノベを依頼したいという声もあると思いますが、ここ韮崎市に事務所を構え続けている理由は?
千葉「元々地元にこだわりたい、という思いはありましたし、町のシンボルだったアメリカヤを復活させたことでいろいろな方面から大きな変化がありました。もともと韮崎市には高校は2つしかなく、現韮崎市長やノーベル賞を受賞した大村智博士も高校の大先輩。先輩後輩を含め、現在は町全体が応援してくれるようになりました」
LiVES アメリカヤの向かいの一角の店舗をリノベーションした「アメリカヤ横丁」など、活動が点から面に広がっていますね。
千葉「私自身、韮崎市観光協会の理事や都市計画審議員などに就任して、官民連携した町づくりができています。現在は町の施設の設計をはじめ、東京から韮崎市に移住してお店を始めたい、不動産を探している、といった相談も来るようになりました」
LiVES 図面を描いている時間がないという感じですね(笑)
千葉「活動は多岐にわたってきていますが〝建築屋だからできること〟が根本なんだと思います。これからも、リノベーションという手法を使って韮崎市をアピールし、昔の賑わいを取り戻していきたいですね」
建築を通して人々に感動を与える存在でありたい。そう笑う千葉さんの顔には、少年の頃に出会ったという大工さんが重なって見えた。
text編集部 photograph_Asami Uchida
IROHA CRAFT
株式会社アトリエいろは 一級建築士事務所
山梨県韮崎市中央町10-17 アメリカヤビル4F
https://www.atelier-iroha.com