50代でたどり着いた価値観を反映。無駄なものを潔く省いたゆとりの空間
Y邸 東京都新宿区 〈設計〉SHUKEN Re
「人生100年時代」と言われる現在。その折り返し地点で考えたいのは、「終の住処」よりも今の暮らしや価値観にフィットし、新しいステージに向かう住まいです。デザインや機能、地域とのつながりを考えながら未来を心地よくする。ご夫妻で17年暮らして感じてきた希望を具現化し、「今」を充実させる住まいに変化させたリノベーションをご紹介します。
Yさんご夫妻が住むのは、30代のときに新築で購入したマンション。ライフスタイルがまだ定まらない当初は疑問を抱かなかったが、暮らすうちに「もっとこうしたい」という部分が見えてきた。都心のコミュニティが肌に合っていたこともあり、この街に根差すべくリノベーションすることに。ただし、理由はそれだけではない。
「母親の介護を経験して、体力が落ちるとできることが限られると実感しました。バリアフリーが必要な年齢になる前に、今の自分たちが心地よい家をつくろうと思いました」(奥さま)
2人にとって必要なものや大切な時間の過ごし方は、歳月のなかで明確になっていた。今後はそれをしっかり見つめて1日1日を濃く過ごしたい、その思いが後押しになった。
「極力すっきりさせて、身軽になりたくて。季節品や蔵書などは近所にトランクルームを借りて保管しています」とご主人。刷新されたY邸は、取捨選択により余分なものが省かれたゆとりある空間だ。不便に感じていた動線や間取りは、生活パターンに沿うよう改善。洗面室と寝室は2方向からアクセス可能にして、これまで混雑していた朝の身支度がスムーズに行えるようにした。さらに「シンプルなほうが心地いい」と、使っていなかった食洗機や床暖房は、これを機に手放した。
「好きなものだけに囲まれているので落ち着きます。部屋に余裕が出て、ほどよい距離で別々のことに没頭できるように。これからの生活が楽しみです」
そう話す表情は希望に満ちていた。
Y邸のリノベ三ケ条
・無駄なものは徹底的に減らす
・部屋の配置と動線は普段の暮らしを反映
・バリアフリーの前に「今」住みたい家に
普段使わないものや設備は思い切って手放し、「今」の自分たちに合う家に。住みながら感じたことをつぶさに生かした動線、間取りも秘訣。
DATA
〈専有面積〉53.74㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉2003年〈リノベーション竣工〉2020年〈設計期間〉3ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈総工費〉1,300万円(税別、設計料別〉
内部仕上げ 〈玄関、廊下、トイレ〉床:タイル 壁・天井:PB+塗装 〈リビングダイニング、主寝室〉 床:オーク複合フローリング 壁・天井:PB+塗装 〈キッチン〉床:タイル 壁:PB+塗装、タイル 天井:PB+塗装 〈洗面室〉床:タイル 壁・天井:クロス 設備メーカー〈キッチン〉造作 〈ガスコンロ〉ノーリツ 〈キッチン水栓〉ミンタ 〈洗面器、洗面水栓〉TOTO 〈トイレ〉TOTO 〈照明〉DAIKO 他
設計:シュウケンアールイー/プランナー南部瑛美
1998年創業の株式会社秀建が母体。東京・千葉を中心にマンション・戸建てなどの住宅リフォーム、リノベーションのプラン・設計・施工を行う。多岐に渡る分野で積み重ねた実績をベースに、高いデザイン力と安心の施工力を提供。千葉・浦安の本店に加え、2020年5月、東京都世田谷区経堂に支店をオープン。
text_Makiko Hoshino
photograph_Akira Nakamura
SHUKEN Re
千葉県浦安市海楽 2・5・35 TEL 047・304・5827/FAX 047・706・4400
ウェブサイト: www.shuken-renovation.jp